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自閉症のコミュニケーション障害

昨日、自閉症の三つ組みの障害について書いた。

自閉症の三つ組みというのは、

対人関係の特異性、コミュニケーションの障害、こだわりと想像力の障害のこと。


今日はコミュニケーションの障害について、少し詳しく書いてみたい。


「コミュニケーションの障害」という時のコミュニケーションという言葉は、

一般的な使われ方とはちょっと違う。


例えば、一般的に「ボクは人とのコミュニケーションが苦手で・・・」といった場合

コミュニケーションという言葉は「(人との)良好な関係つくること」という意味で

使われている・・・と思う。


でも、自閉症の「コミュニケーションの障害」という場合には、

コミュニケーションという言葉は「音声言語によって気持ちを伝え合うこと」という

意味が中心になっている。


自閉症の人たちの中には、自発的な音声言語を持たないケースがある。

例えば、リンゴ・ミカン・イチゴなどのカードを見せて、

お母さんが「リンゴばどれ ?」と言ったとき、リンゴのカードを選ぶことは

できる。ミカンだって、イチゴだって選ぶことはできる。

でも「り・ん・ご」と声に出して言うことができない。

音声言語をもたないケースがある。


また、オウム返しはできるというケースもある。

「リンゴ」といえば、そのまま「リンゴ」と返ってくる。

「夕飯はなにが食べたい ?」と聞くと、そのまま「夕飯はなにが食べたい ?」

と返ってくる。質問しても、質問が繰り返され、答えが返ってこない。


また自閉症の中でも、アスペルガー障害のように比較的音声言語の発達が良好な

ケースもある。でも、その場合でも、問題がないわけではない。


普通に会話が成り立っているように思える場合でも、

人から言われた言葉をキャッチする能力が弱いことがある。

音声として耳には届いているんだけれども、言われていることがイメージできない。


また、教室で先生が全員に向かって話をするような場合でも、聞いている

ようでいて、聞いていない。

まるで先生の言葉のチャンネルに対して、子どもの受信チャンネルが合っていない感じ。


それから、非常に能力の高い場合でも、

言葉の表面上の意味にこだわってしまうこともある。


例えば、中学の普通学級にいたアスペルガー障害の男子の場合。

ある日の朝礼で校長先生のあいさつの最後に

「質問がある人いますか ? 」と全員に向かって言った。

すると、そのアスペルガー障害の男子は

「はい」と手を上げて、その日の新聞の一面に出ていた記事について質問した。

校長先生はもちろん、丁寧に答えた。


そして、校長先生は「ほかに質問のある人いますか ? 」と聞いた。

すると、そのアスペルガー障害の男子はまた「はい」と手を上げて、

日常生活の他愛のないことを質問した。

校長先生は今度は簡単に答えた。


そして、校長先生はまた「ほかに質問のある人いますか ? 」と聞いた。

・・・もちろん、そのアスペルガー障害の男子はまたまた手をあげた。

でも、クラス担任に制止されて、3度目の質問は流れてしまった。


アスペルガー障害の男子にとっては、「質問がある人いますか ? 」という問いに

誠実に反応しているにすぎない。でも、少なくとも、その場の空気は読めていない。

言葉の表面上の意味に反応してしまう。


以上のように自閉症の人たちには

・音声言語をもたないケース

・オーム返しが中心になっているケース

・言われた言葉をキャッチする能力が弱いケース

・言葉の表面上の意味に反応してしまうケース

という特異性がある。


一般的に「コミュニケーションが苦手」という場合と「コミュニケーションの障害」

というのは質的にかなり違う。



つぎは「こだわりと想像力の障害」について、書いて見たいと思います。

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